「nerd: tracing dayline」、東京ゲームショウ2024で試遊出展: 内向的な主人公と音楽を織り交ぜた新感覚アドベンチャーゲーム

3ヶ月前

「nerd: tracing dayline」、東京ゲームショウ2024で試遊出展

「nerd: tracing dayline」は、インディーゲームインキュベーター(iGi)が主催するイベント「東京ゲームショウ2024」のiGi/創風ブースで試遊出展されているPC用アドベンチャーゲームです。本作は「一曲のためのゲームを」というコンセプトに基づいて制作されており、田舎に転校してきた主人公「渡波 汐音(以下、渡波)」が、隣の席に座る男子生徒「亘理 航(以下、亘理)」と会話を通じて交流を深めていく物語が描かれています。

ゲームの概要

「nerd: tracing dayline」は、iGiの第4期タイトルとして選出された作品です。TGS2024では、最新バージョンが試遊可能となっています。試遊版では、クラスで渡波と亘理だけが残された場面からゲームがスタートします。2人は今日の日直で、亘理は学級日誌を担当し、渡波は教室の戸締まりや黒板の掃除などを任されています。教室は2人だけで静まり返っており、少し気まずい空気を和らげるために、渡波は話題を探しながら仕事をこなしていきます。

主人公の性格と会話システム

作品のタイトルに「nerd(内向的などの意味を含む英語のスラング)」と入っているように、主人公の渡波は学校に馴染めていない様子です。この場面では、亘理は学級日誌を書いているため、渡波に話題を振ってはくれません。渡波は見つけた話題を亘理に持ちかけ、帰ってきた反応に応じていくつかの選択肢を選びながら会話を続けます。会話中の選択肢は「質問する」や「話を合わせる」といった漠然とした項目が多く、これは控え目な性格の渡波らしさを体現しています。テキストベースのアドベンチャーゲームでは、選択肢が次のセリフや具体的な行動になっていることも多いですが、本作ではあえて曖昧な項目にすることで、渡波の性格を表現しています。

他のキャラクターとの交流

また、別の場面では「八乙女」というキャラクターも登場します。八乙女は明るく快活な性格で、主人公の渡波とはどう見ても相性が悪そうです。しかし、八乙女は初対面であるにも関わらず、同級生であることを理由に渡波を会話に巻き込んできます。渡波も学校に馴染むため頑張って会話を続け、性格が真反対にも感じられる2人の会話パートが展開されていきます。

ゲームの特徴

ゲームとしては比較的シンプルな作りになっていますが、取り扱っている題材の特殊さが「この先どのような結末に至るのか」という気持ちにさせられます。また、2Dと3Dを組み合わせた絵作りもポイントで、教室内では全体的に淡いカラーリングが採用されています。対して、学校の外に出ると夏の暑さを感じさせるメリハリのある色使いになっています。さらに、要所要所に環境音が取り入れられており、窓を閉める音、自動販売機から缶ジュースが落ちてくる音など、我々の日常に潜む音が非常にリアルに再現されています。

音楽との融合

本作はゲーム体験をそのままミュージックビデオにすることを目指しています。この「ゲーム体験」には、「効果音をMVの音楽にしたり、行動をMVの映像に、さらに言葉が歌詞になる」ことで、「音楽のためのゲーム」が完成するというコンセプトがあります。デモ版では主人公と学校の友人との関係性を描く内容が中心となっていたため、曲がどのように制作されるかまではわからなかったものの、効果音などで印象的なものもあり、そういったミュージックビデオの一部になりそうな要素が散りばめられていました。

リズムゲームパート

なお、筆者がデモ版の終了部分まで遊んだ際には出てこなかったが、開発者のEvan氏の公式Xによると、ギターを演奏するリズムゲームパートも存在するとのこと。記事ではあまり伝えられないが、音にもこだわりを感じるタイトルで、試遊スペースではヘッドホンが用意されているので、試遊する際にはリアルな環境音にも聞き耳を立ててほしい作品です。

結論

「nerd: tracing dayline」は、内向的な主人公が学校に馴染むために奮闘する物語を、独特のアートスタイルとリアルな環境音で表現したアドベンチャーゲームです。ゲーム体験をミュージックビデオに昇華させるという斬新なアイデアも魅力の一つで、TGS2024での試遊を通じて、その魅力を存分に感じ取ることができるでしょう。