YouTuberたちの地方創生:「きまぐれクック」の塩うに完売と地域への影響

3ヶ月前

YouTubeチャンネル「きまぐれクック」のかねこが、長崎県五島市と協力し、地方創生の一環として『きまぐれ塩うに』を販売。9月26日の初回販売と追加販売の両方で、販売開始から約5分で完売したことが話題となっている。

「きまぐれクック」は、魚料理の魅力を伝えるYouTubeチャンネルで、華麗な包丁捌きで幅広い層から支持を集め、チャンネル登録者数は1210万人(9月29日時点)を記録している。日本のYouTuberの中でもトップクラスのクリエイターの一人だ。

今回の『きまぐれ塩うに』は、五島列島の海で大量発生しているガンガゼウニを使用。このガンガゼウニは、磯焼けの原因となる生物で、五島列島の海では藻場が減少する「磯焼け」問題が深刻化している。磯焼けが進むことで、さまざまな生物の産卵場や稚魚の成育場所、餌場がなくなり、食物連鎖が崩壊し、鮑やサザエの漁獲高が減少するなどの被害が生じている。『きまぐれ塩うに』の販売は、単に美味しいものを提供するだけでなく、五島市の海洋環境保全と持続可能な漁業の発展に向けた大きな意義があった。

かねこはこれまでも北海道の漁協と組み、1か月で約66トンのオオズワイガニを販売し、一次産業の売上高に貢献してきた実績がある。この取り組みは2023年の冬、漁協から「オオズワイガニが獲れすぎて困っている」という相談を受け、かねこの影響力を活かして実現した。動画の再生数は116万回を突破し、大きな反響があった。

YouTuberの地方創生の取り組みでは、新潟県佐渡市出身の「けえ【島育ち】」も注目されている。チャンネル登録者数74.7万人のけえは、佐渡ヶ島でオフラインイベントを開催し、約2500人が来場。佐渡ヶ島を巡るバスツアーも2回企画・実施している。普段から佐渡ヶ島に関する企画で動画を制作しており、「佐渡ヶ島!?サドガシマ……」というギャグで小学生から絶大な人気を獲得している。10月に開催される『クールジャパンEXPO in NIIGATA』への出演も決定しており、佐渡の盛り上げに一役買っている。

また、愛知県岡崎市を拠点に活動する東海オンエアも、地方創生の代表格として知られている。チャンネル登録者数707万人を誇る同グループは、2016年から岡崎観光伝道師に任命され、今年で9年連続、9回目となる。東海オンエアのファンはグループゆかりのスポットを巡る聖地巡礼のために岡崎市に詰めかけ、その経済効果は年間約40億円ともいわれている。今年3月には、訪れるファンが泊まる施設が足りないことを受け、リーダーのてつやが自らプロデュースを手がけた宿泊施設『ほてる小栁津』を開業。ファンの聖地巡礼を自ら後押しし、大きな話題となった。

今回の塩ウニ完売という嬉しい結果が出たきまぐれクックや、けえや東海オンエアの成果を含めてみると、YouTuberたちの地方創生はクリエイターと視聴者との良好な関係性なしには成立しないものであることがわかる。ファンから得た信頼と影響力を、地方創生という形で困っている地域や地元、ファンに還元できるとは、地方創生は三方良し、メリットだらけの活動といえるだろう。